(2)「やさしい事務」への変革

事務の効率化は、店舗改革(注3)以前から多方面で実施してきた。その際には、お客さまサービスを低下させないことを大前提に、「廃止」「簡素化」「外部委託」の3つの観点から見直しを行った。

事務は長年積み重ねて出来上がった体系である一方、複雑多岐にわたるため、形式に陥りかねないリスクを内包している。見直しにあたっては、こうした事務を含めて、「なぜこのルールがあるのか」「本当に必要な手続きなのか」について一から検討を行った。必要性の低い事務を「廃止」したうえで、必要と判断した事務については、事務リスクとのバランスを考慮しながら、どこまでやるべきか、「簡素化」できないかを割り切って考えた。最終的に残る事務については、誰が対応すべきかについて「外部委託」も含めて検討を行った。

さらに店舗改革では、デジタル化・ペーパーレス化等により、事務そのものをなくす・減らすという観点も加えて見直しを実施した。こうした事務の削減・簡素化を通じて、三井住友銀行では「やさしい事務」(=お客さま・従業員の双方にとって「優しい」「易しい」事務)への変革を図っている。

具体例として、相続事務については、手続きが複雑で難易度が高く、また高齢化の進展により年々件数が増加していたこともあり、早くから事務の集中と簡素化を進めた。2013年1月に相続オフィスを設置し、一部拠点を対象に、運用商品とローンに関わる相続事務集中の試行を開始。その後、2015年3月までに対象を全拠点に拡大するとともに、対象業務も拡大した。相続オフィスでは郵送手続や電話受付を行い、利便性の高い非対面での手続きを行っている。また手続き面では、手続書類の改定や書類の事前印字システムの導入などにより、お客さまにとって負担の少ない簡素な手続きへと見直しを行った。

ペーパーレス化に関しては、店舗改革の一環で実施したWeb通帳や店頭ペーパーレス取引(ナビゲーション・電子サイン等)の推進等のほかに、営業店における管理負担削減やスペース確保を目的とした書類削減も推進した。たとえば、還元帳票や法定帳票を管理する帳票管理システムに関して、電子化未済帳票のシステム移行や、電子と紙の両方で還元していた紙帳票の廃止など徹底した見直しを実施。こうした書類削減により2019年度の単年度だけで前年度の4割超、約1,200万枚削減し、2020年度にはさらなる削減を実現した。このほか、2013年度から2014年度にかけては、印鑑届や運用商品販売関連書類のセンター集中保管を実施し、営業拠点の省スペース化に大きく貢献した。

2015年度頃からは管理業務の見直しにも取り組んだ。見直しにあたっては、牽制機能など事故防止対策は維持・強化(注4)しつつも、リスク対比で過重感のある管理ルールについてはメリハリを付けて撤廃または簡素化を図った。たとえば2017年4月には、授受簿に記載が必要な物件を明確化するなどルールを見直すことにより、適正管理と効率的運営の両立を図った。このほか、一時保管品や重要用度品など在庫突合ルールの見直し、現金管理の外部委託(2020年10月試行開始)など、幅広い業務において管理負担の軽減を図った。