(3)アジアにおけるマルチフランチャイズ戦略の展開

三井住友銀行は2013年5月、マルチフランチャイズ戦略を最初に実行する案件としてインドネシアの商業銀行Bank Tabungan Pensiunan Nasional(BTPN)の株式24.26%をTPG Nusantara(注9)ほかより取得し、持分法適用会社とした(注10)。インドネシアは世界有数の人口・資源を有し、中長期的に高い経済成長が続くと見込まれた。また、内需の拡大に伴い個人消費も堅調で、対日感情も良好なことから、リテール・SME(中堅・中小企業)業務の成長が期待できた。一方で、法規制・政治面でのリスク、言語障壁等を勘案すると、現地慣行・ビジネスに精通した現地の経営者の確保が不可欠と考えられた。

BTPNは、インドネシアに1,200以上の拠点を持ち、主に富裕層から獲得した預金を年金受給者や商店主向けローンなどマス・マーケットへのローンで運用していた。資産規模・収益とも高い成長を達成するとともに、高い利ざやを背景に高水準のROEを誇っていた。インドネシアの商業銀行の15%(持分法適用下限)超の持分をまとめて取得できる機会は限られていたほか、経営陣の資質も優れていたことから、三井住友銀行は出資に踏み切ることとした。2014年3月には、インドネシアの銀行監督当局の認可を得てBTPNの株式15.74%を追加取得し、出資比率を40%に引き上げた。

マルチフランチャイズ戦略展開の候補国にはベトナムも含まれていた。既に、Vietnam Export Import Commercial Joint Stock Bank(Vietnam Eximbank)が2008年5月に実施した第三者割当増資に三井住友銀行が応じて、出資比率15%の筆頭株主となっていた(注11)。三井住友銀行やセディナ(現SMBCファイナンスサービス)は従業員をVietnam Eximbankに派遣して、アジアリテール業務のノウハウを蓄積するとともに、リスク管理や勘定系システム更改プロジェクトの支援、金融サービスの品質向上、新規商品開発の支援等を実施した(注12)

三井住友銀行は2016年4月、新興国戦略本部がインドネシアとベトナムにおける業務展開を一元的に管理する体制とした。また、新興国戦略本部のシンガポール拠点にはアジア・大洋州統括部との兼務者を置き、東京拠点には国際統括部との兼務者を置く体制とした。これにより、インドネシア、ベトナムにおけるマルチフランチャイズ戦略の加速化を図るとともに、新興国戦略本部と国際統括部、アジア・大洋州統括部の連携強化を図った。