(3)ESG投資への取り組み

環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素に基づくリスク特性を適切に評価し、それを投資判断に利用する取り組み(以下、ESG投資)が世界で加速している。ESG投資には気候変動や女性の社会進出、感染症対策などに積極的に取り組む企業を選別し、地球規模で問題を解決する狙いがある。世界持続的投資連合(GSIA)(注16)によると、世界でのESG投資の資金規模は2020年に35.3兆ドルと6年で2倍近くに増え、運用資産の4割弱を占めている。

世界的に自然災害や異常気象等が増加し、ESG要素の「E」に分類される気候変動への危機意識が世界的に高まるなか、世界的なESG投資を巡る潮流を生み出してきた重要なイベントが、国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)の公表(2006年4月)、17の持続可能な開発目標(SDGs)を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択(2015年9月)、パリ協定の採択(2015年12月)、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD(注17))提言(2017年6月)などであった(注18)

三井住友アセットマネジメントは、2009年11月に自社独自の企業のESG評価を開始し、適格機関投資家向けに国内の個別企業のESGに関する情報に基づくポートフォリオを構築するファンドを設定、2010年3月には国連責任投資原則(PRI)に署名するなど、早くからESG投資に取り組んできた。大和住銀投信投資顧問も、2017年に取締役会の内部委員会として独立取締役を中心とする「責任投資委員会」を設置し、議決権行使をはじめ、投資信託報酬や分配金の決定等に関する、お客さまとの利益相反の管理の強化と業務の透明化を図った。また、2016年10月にスチュワードシップ推進室を設置したほか、2018年2月に三井住友・日本株式ESGファンドを設定した。三井住友DSアセットマネジメントが誕生した2019年4月には、責任投資委員会およびFDアドバイザリー会議を設置して責任投資への取り組み体制を強化した。

三井住友DSアセットマネジメントは、2020年3月にESG投資の基本方針を定め、ホームページで公開した。

  1. ESGを含む非財務情報の分析を行い、プロダクト毎の特性に応じて運用プロセスに組み込み投資判断に際して考慮することで、幅広い投資資産におけるESG投資のフロントランナーを目指します。
  2. 議決権行使において、投資先企業等とのESG関連事項の対話内容を考慮します。
  3. 投資先企業等との対話で当方の視点を伝え、 中長期的な投資先企業等の価値向上もしくは毀損回避のために解決すべきESG課題を論点として共有した上で、より適切な行動を促すなど、投資先企業等への貢献を目指します。
  4. 投資先企業等のESG関連事項の考え方や行動について情報開示強化を促し、資本市場における評価向上への貢献を目指します。

さらに三井住友DSアセットマネジメントは2020年8月、「フィデューシャリー・デューティー宣言」にESGを含むサステナビリティ(持続可能性)の要素を加え、資産運用会社として、また一企業市民としての責務を果たすための基本方針として「FD・サステナビリティ原則」を制定した。「FD・サステナビリティ原則」は4つの原則により構成され、その実践を通じて、未来にわたるサステナブルな社会の実現に貢献するとともに、経営ビジョンである「Quality of Lifeに貢献する最高の資産運用会社」の実現を目指すこととした。2020年11月には初のサステナビリティに関わる報告『Sustainability Report 2020』を公表している。

FD・サステナビリティ原則(骨子)
FD・サステナビリティ原則(骨子)