6.従業員エンゲージメントの向上に向けて

マイナス金利政策の長期化やフィンテック企業との業界の枠を越えた競争の激化といった厳しい業務環境が持続するなか、大学生の就職人気ランキングにおいて、三井住友銀行が総じて順位を下げるとともに、SMBCグループの若手従業員の離職率も緩やかな上昇傾向をたどっていた。そこで、SMBCグループは、2020年4月以降、従業員一人ひとりが最大限の力を発揮できる職場環境づくりに改めて注力することを通じて、「従業員エンゲージメント」の向上に取り組むこととした。従業員エンゲージメントとは、「従業員が組織や仕事に対し、自発的な貢献意欲を持ち主体的に取り組めている状態」を指す(注20)。SMBCグループでは、人事部が、経営・各事業部門と一体となって、人材戦略や組織風土の面から、従業員エンゲージメント向上に取り組んでいる。

2020年1月に実施した人事制度改定を通じて、職務、年次にとらわれない登用を可能にしたほか、2020年4月以降、自律的なキャリアパス・透明性のある異動、納得感のある評価と適切なフィードバックの実現に努めるとともに、人材育成ビジョン(飽くなき成長意欲を持つプロフェッショナルな人材が、自律的に課題設定し、心置きなく挑戦できる環境を整える)に基づく、自律的な成長を実現する環境整備に注力している。

近年は、業務の複雑化や従業員の価値観の多様化等を背景に、上司と部下のコミュニケーションや上司から部下へのフィードバックがますます重要性を増す一方で、時間的制約や働き方の変化もあり、上司・部下のコミュニケーション機会が減少しがちであった。そこで2020年度より、各部店の従業員エンゲージメントの状態を高頻度で「見える化」する「エンゲージメントサーベイ」(注21)を導入し、各部店の課題等を分析・特定することとした。そのうえで、業務打ち合わせではない上司と部下の定期的な「1 on 1ミーティング」を実施することで、各部店の課題の自律的な改善と上司・部下のコミュニケーション円滑化、フィードバックによる部下の成長サポートを図ることとした(図表13-7)。

図表13-7 Check、Review、Actionによるエンゲージメント改善プロセスを継続的に実施
(図表13-7)エンゲージメントサーベイと1on 1ミーティングの導入による 従業員エンゲージメント向上

また、従業員エンゲージメント向上の取り組みの一環として、「前例や常識にとらわれず新しいことにチャレンジし易い環境を作る」ことを目的として、三井住友銀行では、2019年7月から2ヵ月間、一部の本部部署において「各人がTPO(注22)に合わせて自由に服装を選択可能」とする「ドレスコードフリー」を試行した。2019年9月には、本店各部におけるドレスコードフリーの通年化に踏み切った。大手銀行としては初めての試みだけに、メディアにも大きく取り上げられた。ドレスコードフリーは、その後、営業店においても実施されるとともに(注23)、グループ各社においても採用されるに至っている。

さらに、三井住友銀行は2020年10月、社内版SNS「みどりの広場」(通称:ミドりば)を正式に導入し、従業員個人が様々な情報をタイムリーかつカジュアルに発信し合うことで、「知る」「繋がる」「発信する」場を設けた。この「みどりの広場」には現在、様々なコミュニティが形成され、多くの従業員が双方向かつカジュアルな情報発信を行っており、その中から新規事業のアイデアなども生まれている。

(画像)社内SNS「みどりの広場」の各種コミュニティ
社内SNS「みどりの広場」