(3)流動性リスク管理の高度化

世界金融危機は、金融市場と金融機関がその機能を果たすうえで、流動性がいかに重要であるかを再認識させる機会となった。すなわち、危機前は、緩和的な金融環境の下で資金を容易かつ低コストで調達できたのに対し、一旦金融危機が発生すると、市場から流動性が急速に失われ、証券化市場や短期金融市場は機能停止状態に陥った。その結果、一部の欧米金融機関において流動性危機が顕在化した。こうした教訓をもとに、バーゼル委員会は、2008年9月、「健全な流動性リスク管理及びその監督のための諸原則」(注36)を公表し、銀行の規模、業務の性質および活動の複雑さに見合った流動性リスク管理を求めた。2012年12月にはバーゼルⅢテキストが公表され、流動性規制として「流動性カバレッジ比率(LCR:Liquidity Coverage Ratio)」(注37)と「安定調達比率(NSFR:Net Stable Funding Ratio)」(注38)が導入されることとなった。

当社および三井住友銀行では、これまで流動性リスクを、「資金ギャップ(注39)に対する上限値の設定」「流動性補完の確保」「コンティンジェンシープランの策定」の枠組みで管理していたが、2013年度からはRAFを導入し、バランスシートの安定性向上とストレス時に備えた流動性管理の枠組みを整備した。また、2015年3月末からのLCR導入やグループ・グローバルベースでのLCR、NSFRの計測態勢の整備等、規制対応を着実に進めた。