3.マーケットを通じたソリューション提供

(1)外国為替・デリバティブのセールス体制の整備

三井住友銀行の市場営業部門はお客さまへのソリューション提供業務に拡大の余地があると考え、2015年から関連部署との連携強化を検討し始めた。

市場営業部門には外国為替セールスを担当する市場営業推進部があり、営業店と連携しながら、お客さまの外国為替売買の取次やお客さまとの外国為替取引の推進を主たる業務としていた。一方で、外国為替・金利のヘッジニーズなど、外国為替売買以外のお客さまの市場性のニーズもあるため、それらを包括的にお客さまに提供するためには、それぞれの担当部署との連携が不可欠だった。しかし、主要関連部署は、外国為替セールスが市場営業推進部、デリバティブセールスは金融商品営業部、そして決済等トランザクション推進ビジネスはグローバルビジネス推進部と3部に分かれ、各部が属する部門は別々だった。2015年、市場営業部門の働きかけにより、関連3部の担当者が定期的に会合を開くなどして、お客さまに対して市場性の金融商品・サービスを包括的に提供する「三部協働」の試みを開始した。

「三部協働」がさらに前進する契機となったのが、2017年度より始まった中期経営計画だった。中期経営計画では「セールス&トレーディング(S&T)」を戦略事業領域の一角に設定した。S&Tとは、お客さまの市場性のニーズに沿った外国為替・デリバティブ等の商品を提供する枠組みであり、ソリューション提供力の強化がマーケットプレゼンス向上を通じたトレーディング収益の増強、ならびに、さらなるソリューション提供機会の拡大につながる、正の連鎖の構築を目指した。

三井住友銀行では、S&Tのプロジェクト開始に際して、デリバティブを扱う金融商品営業部を投資銀行部門から市場営業部門へ移管して、外国為替とデリバティブのセールス部隊を一つの部門に集約した。その後、法人営業部を地域別に統括する地域本部ごとに金融商品セールスのチームヘッドを任命し、その下に関連3部のセールス推進担当者を配置する形で「三部協働」をさらに推進した。従来は担当部署の違いから、お客さまの外国為替・デリバティブなど各ニーズに対して担当窓口が散在していたが、3部に共通した相談窓口ならびにチームヘッドを配置したことにより、お客さまのニーズのくみ上げとそれに対するソリューションの提供が効果的に行えるようになった。

「三部協働」により、お客さまのニーズを従来よりも詳しく把握できるようになり、関連部署の2019年度のS&T収益は合算ベースで2016年度対比約15%増加し、中期経営計画(2017~2019年度)で設定した目標を超過達成した。

市場営業部門は2020年4月、お客さまへのソリューション提供力を一段と引き上げるため、商品別から機能別への大幅な組織再編を行った。具体的には、外国為替担当の市場営業推進部とデリバティブ担当の金融商品営業部のそれぞれのセールス機能を市場営業推進部に集約して、お客さまのニーズに幅広く応えられる外国為替・デリバティブのワンストップセールス体制を構築した。また、市場営業推進部と金融商品営業部の企画開発機能および市場営業統括部内にあったS&Tの企画機能を「市場ソリューション部」に集約し、データ利活用により、お客さまへのソリューション提案力の強化を目指した。

図表8-7 2020年4月の組織改定で、セールス機能を市場営業推進部へ集約した。
(図表8-7)三井住友銀行の市場営業部門の組織改定