(2)シティバンク銀行リテールバンク事業の統合

2014年に入ると、米国大手金融グループのシティグループが、世界的な事業再編を進めるなかで日本におけるリテール事業から撤退することを決定し、三井住友銀行にも営業譲渡の打診があった。メガバンクなどが参加した2014年9月の一次入札、さらに2014年12月の二次入札を経て、三井住友銀行とシティグループは、SMBC信託銀行が事業を取得することで合意した。

図表5-2 統合した2011年11月1日時点のシティバンク銀行リテールバンク事業の概要。預金残高約2兆3千6百億円、従業員約1540人、お客さま約71万人
(図表5-2)シティバンク銀行リテールバンク事業の概要

事業統合は、合意からわずか1年足らずの2015年11月1日であった。統合準備にあたっては、シティバンク銀行(注6)・SMBC信託銀行・三井住友銀行の3社でステアリング・コミッティを立ち上げて、意思決定やプロジェクト全体の管理を行った。またステアリング・コミッティの下に、営業、人事、コンプライアンス、事務・システムなどテーマごとの分科会を9つ設け、具体的な内容を詰めていった。

ソシエテジェネラル信託銀行買収からわずか1年での事業統合決定、準備期間1年での統合実施は大きな困難を伴うものであったが、3社協力の下、統合手続は無事完了した。統合の翌日、当社および三井住友銀行、SMBC信託銀行は連名でニュースリリースを発出し、新生「SMBC信託銀行」が目指す方向について公表するとともに、統合の狙いについて次のように発表した。

本件統合により、SMBC信託は、シティバンク銀行のリテールバンク事業の持つ外資系金融機関としてのグローバルな商品、専門のスキルを有する担当者による洗練されたサービスを引き継ぎ、富裕層向けのビジネスモデルを拡大してまいります。また、シティグループ・インクとの商品・サービスの継続提供にかかる包括的な契約によるグローバルなサービスの提供や、SMBCをはじめとするSMFGグループ各社との連携強化による、幅広いサービスの提供を行ってまいります。

加えて、シティバンク銀行のリテールバンク事業が有していた顧客基盤獲得や、約1兆円の外貨預金獲得による海外業務の更なる強化、外貨運用やマーケティングなどのノウハウの共有により、SMFGグループ全体としての持続的成長を目指してまいります。

また、事業を引き継ぐにあたり、シティバンク銀行が培ってきた独自性を維持するために、新ブランド「PRESTIA<プレスティア>」を創設し、承継事業に関する商品・サービス、店舗等については新ブランドで展開することとした。「PRESTIA<プレスティア>」は英語の「Prestige」(名声、威信、一流等の意)を由来としており、グローバルに広がるネットワークと高品質なサービスにより、お客さまからの期待に応えたいという強い意志が込められていた。

(画像)SMBC信託銀行プレスティアのロゴマーク
SMBC信託銀行「PRESTIA<プレスティア>」のロゴマーク

SMBC信託銀行は、新たなブランドの認知度向上を図るために、新ブランドを発表した2015年6月から数度にわたって新聞広告を出したほか、統合前後にはテレビCMを集中放映するなど、ブランドプロモーションを展開した。新ブランドについては、2016年度からイメージキャラクター「Mr.PRESTIA」を使用するなど継続的に浸透を図っている。

2015年11月、事業統合後初めての部店長打ち合わせ会で所信表明を行った社長の古川英俊は、新生「SMBC信託銀行」をボートにたとえたうえで、「みんな漕ぎ手です。過去の、SMBCもソシエテ・ジェネラルもシティも関係ありません。お願いしたいことは、今、そして未来に向かって、皆さん個人個人の漕ぐ能力をこの『SMBC信託銀行』のボートで活かしてほしいということです」と述べ、多様な背景・経験を持った人材が適材適所で能力を発揮することを通じて、「最高の信頼と新たな可能性を追求する『SMFGの信託銀行』」および「独自の商品と優れたサービスを提供する『個性溢れる信託銀行』」を目指していくことを宣言した。