4.アジア戦略の深化

国際事業部門は、2017年度よりスタートした中期経営計画において、アジア・セントリックを10年の計で進めるという方針は不変としたうえで、「アジア・セントリック“Next Stage”」として、アジアにおける非日系企業取引の拡大、およびマルチフランチャイズ戦略の加速などを通じて、アジアにおけるビジネスの基盤を拡充した。

(1)アジアにおける非日系大企業取引の拡大

三井住友銀行は2015年度より、アジアの非日系優良企業・成長企業とのリレーションシップの深化と取引複合化を重点施策の一つとしてきた。非日系企業のお客さまごとにアカウントプランを策定して、取引複合化を進める戦略である。オーナー財閥企業グループをはじめとしたフォーカス先の深掘りとアジア域内の連携を強化する「One Asia」の戦略推進によって、預金やキャッシュマネジメントサービス、貿易取引における決済、事業買収に伴う資金調達に関連する資金決済やFX(外国為替)・デリバティブなど、取引複合化を推進した。

また、2017年4月には、シンガポールのアジア・大洋州本部に欧米多国籍企業(MNC:Multi-National Corporation)を専門に担当する「MNCアジア営業部」(注22)を新設し、アジアに進出している欧米グローバル企業とのアジアビジネスの強化を通じ、グローバルベースの取引関係の深化を図った。2019年度からは、MNCに対する「One Asia」でのカバレッジ強化を目指し、アジア・大洋州地域および東アジア地域における拠点にMNCアジア営業部の兼務者を設置するなど、一体運営態勢を構築した。さらに、成長著しい中国マーケットでは、中国企業の海外進出をサポートすることで、中国企業との取引をグローバルに強化する「グローバルチャイナモデル」を推進するなど、中国の規制や企業動向の変化を捉えた柔軟な施策の打ち出しと機動的な対応を強化した。

三井住友銀行(中国)が入居するオフィスビル(中央建物、上海)
三井住友銀行(中国)が入居するオフィスビル(中央建物、上海)

三井住友銀行では、アジアにおける顧客リレーションシップの強化に加えて、ソリューション提供体制の強化にも引き続き取り組んだ。2019年4月にはグローバル決済業務部(シンガポール、香港)の旧グローバル・アドバイザリー機能(日系・非日系企業に対する現地進出支援、情報提供・発信業務)を「アジアソリューション部」に統合し、アジアにおけるソリューション提供機能を強化した。

また、「アジア投資銀行営業部」を、2020年4月には「アジアストラクチャードファイナンス部」(プロジェクトファイナンス等に従事)、「アジアプロダクト営業部」(M&Aや証券化、不動産ファイナンス等に従事)、「アジアローンキャピタルマーケッツ部」(シンジケートローン等に従事)に分割して、アジアにおけるプロダクトの推進・管理の強化を図った。

2020年4月に「アジア・大洋州トランザクションバンキング営業部」を「アジアトランザクションバンキング営業部」に組織改定し、アジア・大洋州地域に加えて東アジア地域(除く中国)を所管地域に追加することによって、アジア一体のトランザクションバンキング業務の推進を強化した。