(2)SMBC日興証券のセールス&トレーディング業務強化
SMBC日興証券のセールス&トレーディング(S&T)業務(注14)の強化は2009年のSMBCグループ入り以来の課題であった。
SMBC日興証券は、過去にはS&T業務に従事していたが、1999年以降、トラベラーズ・グループ(現シティグループ)との資本・業務提携により、同業務を、国内においては日興ソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)に、また海外においてはソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)の国外拠点に移管・集約しており、2009年に三井住友銀行が日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)の全株式を取得した際、SMBC日興証券にはS&Tと呼べるほどの機能はないに等しかった。S&T業務は体制整備から始めねばならず、道のりは厳しかった。
SMBC日興証券は、国内の個人のお客さま、ならびに地方の金融機関に対する販売力を有していたため、国内における日本株ならびに債券の引受販売は比較的早期に実績を積み上げていくことができたものの、国内外におけるセールス、トレーダーならびにアナリストなどの人材確保、さらに、株式トレーディングに関わるシステムの開発など、業務基盤をほぼゼロから構築した。また、海外については拠点の立ち上げからのスタートとなり、海外投資家の開拓も口座開設のための地道な営業活動から始まった。2010年から2012年にかけて、三井住友銀行との連携によって海外拠点が立ち上がると、まずはロンドンを中心として日本株グローバルオファリングに必要な引受機能を整備し、ニューヨーク、香港などでの日本株販売体制の整備を進めた。次に債券の引受販売業務の立ち上げをロンドンから取り組み、2013年に米国FHC(Financial Holding Company:金融持株会社)ステータス取得によってニューヨークにおいても日本株ならびに債券の引受業務が可能になったことから、ニューヨークでの引受販売機能の整備、および、香港、シンガポールでの債券販売体制の整備を順次進めた。
こうした体制整備とともに、S&T収益は、国内における株式ならびに海外における債券のS&Tを中心に拡大した。S&T拡充に伴い、債券・株式の引受業務も徐々に拡大した(注15)。2017年度に当社は中期経営計画において、S&Tを重点施策とし、SMBC日興証券のS&T業務の強化をグループベースで、より注力していくこととなった。2020年度には、新型コロナウイルス感染症拡大に対して利下げと量的緩和策が実施されたことを背景に、米国における社債発行の増加や年度後半の国内の株式市場の活況が追い風となったこともあり、S&T収益は2017年度対比、約20%増の水準となった。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに