第6章
法人/ホールセール取引における戦略展開

1.法人向けトータルソリューション戦略への取り組み

世界金融危機後、国内の資金需要が限定的で、預貸金利ざやも次第に低下傾向を強めるなか、三井住友フィナンシャルグループ(当社)は中期経営計画(2011~2013年度)において「法人向けトータルソリューションビジネス」を経営上重要な戦略事業領域の一つとして選定。法人のお客さまの多様な経営課題に的確に応える、質の高いソリューションの提供に引き続き積極的に取り組んだ。

(1)ソリューション提供力の強化

三井住友銀行は2006年4月、法人部門(中堅・中小企業中心)、企業金融部門(大企業中心)の双方にまたがる「コーポレート・アドバイザリー本部」(注1)を設置し、従来からのフロント組織である企業金融部門の営業部、法人部門の法人営業部と一体のダブルフロントとして、事業拡大、企業再編等、お客さまの経営課題に応える総合的かつプロフェッショナルなソリューションを提供することとした(注2)。2008年4月には、グローバル・アドバイザリー部を法人・企業金融・国際の3部門にまたがる本部組織として新設し、日系企業の海外進出と事業展開に関する様々なクロスボーダーの経営課題やニーズに対するシームレスなサービスとソリューションの提供を強化した。

これに加えて、三井住友銀行の投資銀行部門およびSMBC日興証券を含むグループ会社の力を結集することで、資金調達・運用、M&A、リスクヘッジ、企業間資金決済など、企業の多様なニーズに対し最適なソリューションを提供し、お客さまのビジネス展開や企業価値向上をサポートする体制としてきた。

このうち、三井住友銀行の投資銀行部門は、法人部門や企業金融部門と連携しながらも、プロダクトごとに自らも営業推進する、いわゆる「ダブルフロント体制」をとっていた。しかし、企業ニーズが多様化、高度化するなか、①プロダクトごとの縦割営業、②お客さまニーズを起点としたソリューション提供が不十分、③汎用化したプロダクトのボリューム拡大に注力し、新商品開発やオーダーメイドの高難度案件を組成するリソースが不足しがち、④業務・組織の細分化により機動的な人員運用が困難などの課題が次第に顕在化していた。

そこで三井住友銀行は2012年4月、投資銀行部門に「ファイナンシャル・ソリューション営業部」を設置し、シンジケートローンや国内ストラクチャードファイナンス、証券ファイナンス、アセットファイナンス等のオリジネーション機能を集約した。マルチプロダクトスキルを有する精鋭部隊を地域本部別に担当として配置することで、営業店と一体となって、プロダクト起点ではなくお客さまニーズ起点で、案件の捕捉・採り上げをサポートすることとした。同時に、各プロダクトにまたがるような難易度の高いお客さまニーズに対するオーダーメイド対応も強化した(注3)