4.強みを持つプロダクトによるプレゼンス向上
三井住友銀行は、自社が強みを持つプロダクトセクターである、プロジェクトファイナンスやトレードファイナンスに引き続き注力し、グローバルなプレゼンスの向上を図った。
具体的には、2012年4月、海外を中心に成長著しい資源・インフラビジネス等に関わる資金ニーズへの対応を強化するため、「ストラクチャードファイナンス営業部(注27)」からプロジェクトファイナンスなどの業務を分離し、「プロジェクトファイナンス営業部」を設置した。プロジェクトファイナンスとは、特定事業に対して融資を行い、そこから生み出されるキャッシュフローを返済の原資とし、債権保全のための担保も対象事業の資産に限定する手法である。石油・ガスなどの資源開発や橋梁・発電所などのインフラ整備、石油化学などのプラント建設など、大規模な事業のファイナンスに参画した。一方、インフラ向けファイナンスについては、一般的に長期の融資が多くなるため、融資の裏づけとなる外貨調達とのバランスを見ながらの運営とした。
三井住友銀行は、ローンのアレンジのみならず、ファイナンスに関わる各種アドバイスを提供するファイナンス・アドバイザリー(FA)業務や、協調融資参加行や担保権者に関わる取りまとめを行うエージェントサービス業務(融資幹事業務)にも力を入れ、数多くの実績を積み上げた。2014年にはプロジェクトファイナンス分野で最も権威ある専門誌「Project Finance International」(トムソン・ロイター(現REFINITIV)発行)において、この分野では最高の栄誉である「Global Bank of the Year 2014」を受賞した。2008年、2012年、に続く3度目の受賞となり、プロジェクトファイナンス分野における業界最多の快挙となった(注28)。

また、世界的に貿易取引が顕著に増加し、貿易決済のあり方の変化が進むなかで、トレードファイナンス業務には大きな成長余地があるとして、拠点、人員等の資源を投入し、グローバルにトップクラスの銀行としての地位を一層向上・強化させた。
企業の海外進出加速により海外でサプライチェーンを形成する動きが拡大し、サプライチェーンファイナンス(注29)のニーズが増加したことを受け、2013年4月にはトレードファイナンス営業部の部内室として「グローバル・サプライチェーン・ファイナンス室」を設置し、海外におけるサプライチェーンファイナンス業務を強化するとともに、決済ビジネス等との連携を推進した。
そのほか、インオーガニック戦略を通じて強化した航空機リースをはじめとするアセットファイナンスや、サブスクリプションファイナンス(注30)、LBOファイナンスも当社が強みを持つ高採算ビジネスであった。三井住友銀行は、こうした強みを有するプロダクトを強化する戦略を「クレジットフォーカス戦略」と呼び、引き続き積極的に取り組んだ。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに