第9章
アセットマネジメントビジネスの強化

1.国内アセットマネジメントビジネス強化への道のり

(1)三井住友アセットマネジメントの連結子会社化

世界金融危機後、わが国では株価が長期にわたり低迷して年金基金等の資産運用残高が減少した一方、個人金融資産の投資信託への流入は堅調を維持した。その結果として、アセットマネジメントビジネスにおける投資信託事業の重要性が相対的に高まった。投資顧問事業に軸足を置いていた三井住友アセットマネジメント(注1)も、投資信託事業の強化を進めたが、投資信託事業への一層の経営資源の投入および投資信託販売会社との連携強化等が課題となった。

そこで、三井住友銀行は2013年3月、三井住友アセットマネジメントの株式12.5%相当分を住友生命保険より取得し、同社の筆頭株主となった(出資比率:三井住友銀行40%、住友生命保険27.5%、他は不変)。三井住友銀行やSMBC日興証券、SMBCフレンド証券は、いわゆる「オープンアーキテクチャー」(注2)の下で三井住友アセットマネジメントの投資信託を販売していたが、三井住友銀行は、同社の商品開発力、販売サポート力を大幅に強化して、同社がグループ内外で「選ばれる運用会社」へと成長していくことを目指し、出資比率を引き上げた。

その後もアベノミクスの異次元金融緩和の下で株高が進行するとともに、2014年1月にはNISA(少額投資非課税制度)(注3)が導入され、個人の資産運用ニーズが一層高まった。三井住友銀行やSMBC日興証券、SMBCフレンド証券における投資信託販売は拡大傾向をたどったが、SMBCグループには連結子会社としてのアセットマネジメント会社が存在していなかったため、アセットマネジメント事業の当社連結業績への寄与は限定的なものにとどまっていた。その一方で三井住友フィナンシャルグループ(当社)が「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs:Global Systemically Important Banks)」に選定され、自己資本比率規制が大幅に強化されるなかで、資本賦課の小さなアセットマネジメント事業の重要性が高まっていた。

そこで、三井住友アセットマネジメントの既存株主と当社との話し合いが行われ、最終的に当社が三井住友アセットマネジメントを連結子会社化することとなった。まず、三井住友銀行が2016年7月、住友生命保険、三井住友海上火災保険、三井生命保険(現大樹生命保険)より三井住友アセットマネジメントの株式20%相当分を取得し、連結子会社とした。2016年10月には、当社が三井住友銀行より三井住友アセットマネジメントの株式を取得し、当社の直接出資子会社とした(出資比率:当社60%、住友生命保険20%、三井住友海上火災保険20%)。これは、資産運用会社としてのフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)の観点から、系列販売会社でもある三井住友銀行と三井住友アセットマネジメントとの資本上の親子関係を解消することを目的としていた。また、2016年度には三井住友アセットマネジメントの取締役・監査役構成を見直し、株主会社以外から社外役員を4名招聘し、アセットマネジメント会社としての経営の独立性を強化した。

SMBCグループの連結子会社化に先立つ2015年8月、三井住友アセットマネジメントは「フィデューシャリー・デューティー宣言」を業界に先駆けて公表した(注4)。これは、2017年に金融庁が制定した「顧客本位の業務運営に関する原則」の精神を先取りしたものであった。2015年10月には、CEOの諮問機関として社外有識者の観点からフィデューシャリー・デューティー全般をチェックする「FD第三者委員会」(注5)を設置し、第三者の視点を業務運営に反映させる体制を整えた。それ以降、運用のプロフェッショナルとしてお客さまのQuality of Lifeに貢献する金融サービスの提供を経営目標に掲げ、分配金方針の見直し、わかりやすいお客さま向け説明資料の作成、ライフステージ対応商品の運用など、フィデューシャリー・デューティーのトップランナーとしてお客さまに対する運用責任を全うするための様々な取り組みを行った。