シティバンク銀行リテールバンク事業統合後の新システムへの移行
SMBC信託銀行によるシティバンク銀行リテールバンク事業の統合は、2014年12月25日に公表され、統合日は2015年11月1日と決まった。SMBC信託銀行は、統合後もシティバンク銀行の商品・サービスを継続して提供するとしたものの、公表から統合までの期間が1年にも満たなかったため、新たなシステムを開発する時間的な余裕がなかった。そこで、当面はシティバンク銀行のシステムを借用して引き続き商品・サービスを提供しつつ、新たなシステム開発を行っていくこととした。
まず統合日(LD1(注8))までに、シティバンク銀行側を中心に、全銀ネットなど決済系システムへの接続や銀行名変更への対応等が行われ、SMBC信託銀行においてもTSA契約(注9)の対象外である人事や財務など本社系システムが開発された。
次にシステム統合(LD2)に向けた準備が進められたが、システム開発にあたっては、三井住友銀行のシステムをベースにSMBC信託銀行に合わせてカスタマイズしたシステムを新たに構築する一方で、シティバンク銀行の商品・サービスを維持するためのシステム開発も同時に行われた。大掛かりな開発にもかかわらず、開発期間が限られていたことに加え、シティバンク銀行とのシステム構造の差異やコミュニケーションギャップの制約(注10)などにより、開発・準備作業は極めて難易度の高いものとなった。当然のことながら、シティバンク銀行の全面的な協力が欠かせなかった。
シティバンク銀行、SMBC信託銀行、三井住友銀行、開発を担当した日本総合研究所の4社が一体となって協力体制を構築し、設計・開発・テスト等が進められた。また、営業店用端末として三井住友銀行の「CUTE」を参考に「PRIME」が開発され、投資信託関連のシステムとしては日興システムソリューションズの投資信託窓販システム「BPS(Best Partner Series)」が導入された。
システム統合において開発と同様に重要なことは、ユーザーとして新システムを使うことになる「人」の問題である。システム統合に伴い、事務帳票の様式や営業店端末の画面が大きく変更され、それまで存在しなかった「日締め」が導入されるなど概念が変わる部分もあったことから、入念な研修・リハーサルが実施された(注11)。LD2対応としてはこのほかに、お客さま宛て計9回の告知、各種マニュアルの作成、フォールバックプラン(注12)やコンティンジェンシープランの作成など、万全の準備が整えられた。
事業統合からシステム移行まで2年9ヵ月。2018年7月17日、多くの関係者の努力・尽力・協力が実り、システム移行は大きな障害もなく実施された。各社協力の下、難易度の高いシステム移行を無事成功させたことは外部からも評価され、シティグループとSMBC信託銀行は、「平成 30 年度(第 36 回)IT 賞」(注13)においてITマネジメント賞を受賞した。受賞理由には、「シティグループの国内・海外拠点や SMBC グループ内との非常に複雑な調整・連携を必要とする大規模なシステム開発であり、また厳重な品質管理を求められるプロジェクトであった」と記載されていた。LD2がいかに困難なプロジェクトであったかがよくわかる。

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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに