3.大相続時代への対応
(1)相続・承継ビジネス強化に向けた体制整備
少子高齢化が進展するなか、わが国における年間死亡者数は2040年頃まで増加傾向をたどると推計(注21)されており、マスコミ等において「大相続時代」到来などと言われるようになった。加えて、2013年度の税制改正により相続税の課税強化が決まり(注22)(改正相続税法施行は2015年1月)、中小企業等経営者の高齢化や後継者不足と相まって、高齢者が保有する金融資産や不動産、自社株などの承継問題に対する社会的な関心が高まっていた。
三井住友銀行もお客さまの課題解決をサポートすべく、相続ビジネスや事業承継・資産承継ビジネスに積極的に取り組んでいたものの、当社グループ(注23)は傘下に専業信託銀行を擁していなかったため、規制緩和により三井住友銀行が遺言信託業務に参入したのは2005年2月と出遅れていた。遺言信託は相続ビジネスの中核商品であるだけでなく、これをきっかけに資産承継や事業承継へとつながる可能性のある商品であり、相続・承継ビジネスの強化は急務であった。
そこで、2012年度に成長戦略プロジェクトの一つとして、個人部門において相続ビジネスタスクフォースを立ち上げ、ビジネス強化に向けた検討を行った。その結果、「本部体制の強化」「営業店体制の強化」「マーケティングプラン」「商品戦略」などの方針が打ち出され、2013年度以降、組織改革など様々な施策を実施していった。
まず2013年4月に、各部に分散していた相続・事業承継・資産承継に関わる営業店サポート機能をプライベート・アドバイザリー部に集約するとともに、部内室として遺言信託業務室を設置した。プライベート・アドバイザリー部は、個人部門と法人部門の両方にまたがるプライベート・アドバイザリー本部に所属しており、機能集約によって個人部門と法人部門が連携しやすくなり、相続・事業承継・資産承継におけるシームレスな対応が可能となった。遺言信託業務室の設置は、業務強化を図るとともに、三井住友銀行が遺言信託業務を行っていることを対外的にもわかりやすく示すという狙いもあった。同室は、その後の業務拡大に伴い2018年4月に相続アドバイザリー部となった。
一方、営業店においては、遺言信託など相続・承継関連業務の経験・スキルを持った担当者が限られていたことから、担当者の指導や業務サポート、ノウハウの共有に注力した。具体的には、プライベート・アドバイザリー部の拠点担当者によるOJT、人事部研修所の集合研修や夜間・休日セミナー、TV勉強会など様々な形で、業務知識・商品知識・税制等に関わる研修を実施した。現場力がある程度上がってきた2018年4月には、支店における相続・承継ビジネス全般の推進責任者として、相談課長を「相続・承継オフィサー」に任命し、お客さま対応や案件管理、担当者の指導・サポートなど支店における相続・承継コンサルティング業務全般を、同オフィサーを通じて推進することとした。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに