(2)「お客さま本位」に対する社会的な要請の高まり

金融庁は、2014年7月に公表した「金融モニタリングレポート」において、日米の家計金融資産の規模拡大に差異が生じた要因について分析を行い、その一因として、投資信託などリスク性資産の保有割合の違いを挙げた。そして、投資信託の販売において重要な役割を担っている銀行の販売状況について、平均保有期間の短期化や売れ筋商品の偏り(注2)などの事実を提示し、営業現場のインセンティブのあり方など投資信託販売業務の改善検討への期待を示した。

同レポートを踏まえた「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針(監査・検査基本方針)」(金融庁、2014年9月)では、国民の安定的な資産形成を図り、投資への流れを一層促進するために、資産運用に関して、「商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関がその役割・責任(フィデューシャリー・デューティー)(注3)を実際に果たすことが求められる」として、初めて「フィデューシャリー・デューティー」に言及した。

さらに、「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」(注4)について審議を行った金融審議会が、2016年12月に公表した報告書(注5)では、「金融事業者が自ら主体的に創意工夫を発揮し、ベスト・プラクティスを目指して顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、より良い取組みを行う金融事業者が顧客から選択されていくメカニズムの実現が望ましい。そのためには、従来型のルールベースでの対応を重ねるのではなく、プリンシプルベースのアプローチ(注6)を用いることが有効であると考えられる」とし、当局による原則策定を提言した。これを受けて、金融庁が2017年3月に策定・公表したのが、「顧客本位の業務運営に関する原則」である(2021年1月改訂)。本原則は、「顧客本位の業務運営におけるベスト・プラクティスを目指す上で有用と考えられる原則」を定めたもので、金融機関等に対して、「お客さま本位の業務運営」を実現するための方針の策定・公表、方針に関わる取組状況の定期的公表などを求めた。

一方、SMBCグループでは、三井住友銀行において資産管理型運用ビジネスへの変革(注7)を図るなど先取的な取り組みを既に始めていたが、前述のような「お客さま本位」に対する社会的な要請の高まりを受けて、「お客さま本位の業務運営」への取り組みをさらに強化することとした。

まず2017年4月に、SMBCグループの「お客さま本位の業務運営」に関する取り組みを協議するため、グループ経営会議の中に「CS向上会議」を新設し(三井住友銀行のCS・品質向上委員会から衣替え)、その下部組織として「CS向上部会」を設置した。CS向上部会には、幅広い視点を経営に反映させるために、3名の外部有識者を招聘した。実務的には三井住友銀行と同様に当社内にも品質管理部(注8)を設置し、同部が「お客さま本位の業務運営」に関わる態勢整備・取組状況管理などを行うこととした。さらに、取組状況を管理・統括するために、各事業部門に「お客さま本位」推進責任者を配置した。

また当社は、金融庁の「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択し、その求めに応じて、2016年3月に策定・公表した「フィデューシャリー・デューティー宣言」を改定する形で「お客さま本位の業務運営に関する基本方針」を策定し、リテール事業部門における「お客さま本位の業務運営に関する取組方針」と併せて、2017年6月に公表した(注9)

(動画)「お客さま本位の業務運営に関する基本方針」の紹介

2019年5月には、基本規程である「SMFGCS推進規則」から「お客さま本位の業務運営」に関わる箇所を抜き出し、内容を拡充させたうえで、最上位の重要規程として「SMFGお客さま本位の業務運営に関する管理規程」を制定した。規程化することにより「お客さま本位の業務運営」に関する基本事項を明確化し、SMBCグループ各社や役職員間での価値観共有を図った。

このほか当社では、国際標準化機構(ISO)が発行した苦情対応に関する国際規格ISO 10002への自己適合の宣言(2017年4月)、グループ3社合同の「お客さま本位の業務運営研修」の実施(2018年12月)など様々な方法により、「お客さま本位」のさらなる徹底・浸透に努めている。