(2)遺言信託・遺産整理業務の推進
遺言信託・遺産整理業務は、ニーズを持つお客さまが相当数見込まれるうえ、金融機関にとっても、お客さまとの信頼関係構築や次世代との取引につながるという効果も期待できたことから、特に重点的に推進を図った。
とはいえ、遺言を書くということは人生の一大事であり、お客さまの気持ちが固まるまでに時間がかかること、遺言を書くきっかけやタイミングが重要であることを考慮し、三井住友銀行ではお客さまへのこまめな情報提供を中心に、時間をかけて取り組んでいった。
まず、相続・承継ビジネスに関わる当社グループのブランディング戦略も兼ねて、日本経済新聞社が主催するセミナー「相続・事業承継フェア」に2013年から毎年協賛・登壇し、幅広く情報提供を行った。個別の営業店ベースでは、人生経験豊富な支店長が自ら講師を務める少人数セミナーを頻度高く実施したほか、相続全般について解説した資料『相続読本』(2016年5月)や新聞記事を活用したツールなど各種お客さま向け情報提供資料や、「相続税・株価試算書等作成サービス」などにより、相続対策をしっかり行っておくことの重要性を伝えた。

さらに、お客さまニーズに広く応えるために、それまで三井住友信託銀行に取り次いでいた遺産整理業務を三井住友銀行本体で開始(2013年2月)したほか、お客さまが支払う手数料体系の異なる遺言信託「100型」の導入(2016年11月)、一定条件を満たしている場合に安価かつWebのみで遺産整理と類似のサービスが利用できる「相続手続らくらくサービス」を開始(2020年6月)するなど、商品・サービスを拡充した。
お客さまを広げていく取り組みとしては、それまでも実施していた法個連携(注24)に加え、グループ内連携を強化した。すなわち、SMBC日興証券が三井住友銀行の代理店として、2012年11月から遺言信託業務を、2018年5月からは遺産整理業務を開始。SMBC信託銀行との間では代理店という形を取らなかったものの、相続・承継ニーズのあるお客さまをSMBC信託銀行から三井住友銀行へ紹介する仕組みを2015年11月に構築し、連携を強化した(注25)。
特に、SMBC日興証券には遺言信託・遺産整理ニーズのあるお客さまが多かったため、2014年度から相続に精通した人材をSMBC日興証券に出向させて、体制整備と人材育成を進めた。また、当社グループ全体の遺言信託・遺産整理業務の人員強化のために、2017年度からSMBC日興証券やSMBC信託銀行の人材を三井住友銀行相続アドバイザリー部で受け入れて体制強化を図る一方で、2019年度からはSMBC日興証券の販売担当者であるライフコンサルタントをトレーニーとして受け入れている。
こうした取り組みにより、2020年度までの10年間で三井住友銀行における遺言信託の年間受託件数は5倍以上増加した。その結果、三井住友銀行の遺言書保管件数シェア(注26)は約9.8%(2021年3月末時点)と、専業信託銀行と肩を並べる水準にまで拡大した。

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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに