第15章
「コロナ危機」への対応

2020年1月以降、中国において新型コロナウイルス感染症(以下、新型感染症)の罹患者が急増、その後、感染が世界的に拡大し、市民生活や社会経済活動に甚大な影響をもたらした。

日本政府は2020年1月30日、新型感染症の国内への流入が確認されるなか、「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置した。世界保健機関(WHO:World Health Organization)も同日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。これを受け、三井住友銀行は1月31日、頭取を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置し、新型感染症対策に関する情報収集や行内への注意喚起を実施するとともに、一層の感染拡大を想定して重要業務の継続に向けた準備を進めた。4月7日に日本政府が7都府県を対象に緊急事態宣言(注1)を発出すると、SMBC グループは、お客さまや従業員の健康と安全の確保を徹底しつつ、社会機能の維持に必要不可欠な金融・社会インフラとして金融サービスの継続的な提供と医学・医療関係機関の支援をはじめとする地域・社会への貢献活動に、グループ一丸となって取り組んだ。

1.お客さまへの対応

新型感染症の拡大に伴い、事業者が厳しい資金繰り状況に直面するなか、三井住友銀行は2020年3月23日、日本銀行の「新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペレーション」(注2)を活用した大企業および中堅・中小企業のお客さま向けの2つの「特別ファンド」を設定することを公表した。当初、2つのファンド合算で3,000億円としていたが、5月22日に1兆円に規模を拡大して、法人のお客さまの資金繰りを積極的に支援した。

5月1日からは、中堅・中小企業、個人事業主向けの実質無利子・無担保の制度融資(注3)の取扱いを開始し、5月2日から始まったゴールデンウィーク中も、法人営業部や法人エリア、コールセンター等の営業を行い、事業者等からの融資相談や既往債務の条件変更などの要請に迅速に対応できるようにした。

さらに、2020年5月22日には、医療事業者を対象とした「医療支援ファンド」(1,000億円)を新設し、病院や医療関連用品メーカーによる新型感染症の治療、必要な物資・設備の生産・調達に必要な運転・設備資金を支援することとした。6月からは、国内中堅・中小企業におけるテレワークの導入を支援するため、各種オンライン・サービスの費用を一部支援する「テレワーク導入支援プログラム」(注4)を実施した(2020年6月~2020年12月)。こうした取り組みの結果、企業からの資金支援要請は、2020年7月をピークに次第に落ち着きをみせ始めた。

図表15-1 コロナ危機の下でのお客さまへの対応
(図表15-1)お客さまへの対応

個人のお客さまに対しては、社会機能の維持に必要不可欠な金融・社会インフラとして全支店の営業を継続し、預金の払い戻しや決済、融資等の金融サービスの提供を継続した。緊急事態宣言下で多くのお客さまが来店するなか、急ぎでない取引の場合には、非対面取引や後日の来店を案内するなどして対面取引を極力減らし、店舗における感染拡大を防ぐこととした。

2020年7月には、新規口座の開設や住所変更等の各種手続き、資産運用や相続の相談の際の「予約サービス」の導入が全店で完了し(注5)、事前に予約したお客さまに待ち時間なく対応できるようにした。また、非対面で取引が完結するインターネットバンキングやATMの利用を推進するため、2020年5月に「SMBC at HOMEプロジェクト」(注6)、6月からは「SMBCで口座開設 at HOME」(注7)をはじめとするお客さま向けキャンペーンを実施した。

(画像)「ご予約の方、お店でお待たしません」と予約サービスの利用を勧めるチラシ
支店における「予約サービス」導入に関するチラシ